第四挿話 カリュプソ
1904年6月16日
朝8時ごろ
レオポルド・ブルーム
が
腎臓のソテーを料理したり
猫にミルクをやったり
肉屋に並ぶ女性の尻を見たりする
「手紙」を見つけたり
「会者定離輪廻」(
metempsychosis
)について語ったり
娘からの手紙を見たり
軽い胸騒ぎ、後悔、それが背筋をすーっと流れて、勢いを増す。そうなるだろうな、きっと。防げ。むだだ、動きょうがない。若い娘の甘い軽やかな唇。こっちもそうなるだろう。流れる胸騒ぎが全身にひろがるのを感じる。いまさら動いてもむだ。キスされて、キスして、キスされる唇。ぴったり吸いつく女の唇。
『ユリシーズ1-12』
p.120
おトイレに入ったり
亡くなった友人を悼んだりする(おわり)